SNS運用代行の見積もりを取ると、月額の行の下に「初期費用」という項目が入っていることがあります。月額とは別に、契約の最初に一度だけ発生する費用です。
この記事は、その初期費用が何に対して発生しているのかを書いたものです。結論から言うと、初期費用は「投稿が始まる前に終わらせておく仕事」への代金です。誰に向けて何を出すのかを決め、アカウントを投稿できる状態に整え、撮影が回る段取りを作る。この部分は毎月発生しないので、月額に混ぜず初月に分けています。
そして、初期費用が発生しない会社もあります。それが単純に安いという話ではありません。初期費用の有無は、設計の工程を誰がいつやるのかの違いとして現れます。ここを見ないまま提示された数字だけを比べると、そもそも比較になりません。
初期費用は「投稿が始まる前に終わらせる仕事」への費用です
月額は繰り返す作業、初期費用は繰り返さない作業
月額のほうは分かりやすいと思います。撮影に行く、動画を作る、投稿する、数字を見る。これを毎月繰り返します。だから本数が増えれば上がりますし、撮影の回数が減れば下がります。作業量と費用が素直に対応しています。
対して初期費用は、繰り返しません。アカウントの方向を決める作業は、契約の最初に一度やれば、翌月からやり直すものではないからです。性質が違うので、同じ物差しに乗せられません。
だから初期費用は「1本いくら」で数えられません
月額は本数で説明できるのに、初期費用だけは何を数えているのか分からない。見積もりを読んでいて引っかかるのは、たいていここだと思います。それは自然な引っかかり方です。初期費用は成果物の数ではなく、工程の有無で決まっているからです。
ですから確認のしかたも変わります。単価を聞くのではなく、「何をやって、何が手元に残るのか」を聞くことになります。
初月の請求がどうなるかは、会社ごとに違います
初月は初期費用だけを請求して、翌月から通常の運用に入る形があります。初月から月額も同時に発生する形もあります。初期費用を分割にする形もあります。
見積もりを比べるときは、初月にいくら動くのかを必ず確認してください。初期費用の行だけを見ていると、初月の負担を読み違えます。ここは聞けばすぐ答えが返ってくる質問なので、最初に済ませておくのが楽です。
初期費用の中で、実際に手を動かしている工程
ここは会社ごとに範囲が違うところです。当社が何をしているかを書きます。他社と比べるときの物差しとして使ってください。
誰に向けて何を出すのかを決める
最初にやるのは、方向を決める作業です。どんな人に見てほしいのか。その人が何を知りたいのか。このアカウントは何の場所として認識されるのか。ここが決まっていないと、投稿1本ずつの企画が毎回ゼロから始まってしまいます。
私が引き継いだ案件で、コンセプトから作り直したことがあります。それが後になって伸びました。正直、自分でも驚きました。ただ、やっている最中は効いているのかどうか分かりませんでした。手応えは一切ないまま、しばらく経ってから急に来た、という感じでした。
この工程は成果がすぐ見えません。だから軽く扱われがちなのですが、ここが決まっていないアカウントは、あとで必ず迷います。
アカウントを投稿できる状態に整える
プロフィール文、リンク先、ハイライトの構成、投稿の見た目の基準。この辺りを整えます。すでにアカウントがある場合は、いまの状態を見て、どこを直してどこを残すかを決めます。
撮影と投稿の段取りを作る
撮影に行く日をどう決めるか。当日は誰が立ち会うのか。何をどこで撮るのか。撮ったものをいつまでに形にして、誰が確認して、いつ出すのか。この流れを決めます。
これを決めずに始めると、翌月から毎回「今月はいつ撮りますか」という調整が発生します。運用が始まってからの手間は、ほとんどここで決まります。依頼する側が先に決めておける部分もあるので、SNS運用代行を頼む前に準備するもの|依頼側で先に決めておく5つもあわせて見てください。
企画の型と、最初の分の台本を作る
毎月ゼロから企画を考えていると、量が出せません。だから最初に、繰り返し使える型をいくつか作ります。そのうえで初回分の台本を書きます。
台本そのものは月額のほうにも含まれます。初期費用でやっているのは、その台本を書くための「型」を作る部分です。ここは境目が分かりにくいので、見積もりでも食い違いやすい箇所です。
媒体によっては、映像の部品そのものを作ります
動画を主軸にする媒体では、オープニングとエンディングのような、毎回使い回す部品を最初に制作します。これは設計ではなく制作なので、そのぶん初期の作業量が増えます。
初期費用の重さが会社によって違うときは、制作物が入っているかどうかを見てください。設計だけの初期費用と、映像素材の制作が入る初期費用では、同じ「初期費用」という名前でも中身が別物です。
初期費用の重さを動かしている条件
ここが、この記事でいちばん使ってほしいところです。額そのものより、どの条件が動くと上がって、どの条件が減ると下がるのかを知っておくと、見積もりが読めるようになります。
ゼロから作るのか、既存のアカウントを引き継ぐのか
ゼロから作るほうが高い、と思われがちですが、そうとは限りません。既存アカウントの引き継ぎは、過去の投稿を見て何が使えて何を捨てるかを判断する工程が増えるので、むしろ重くなることがあります。フォロワーが付いている場合は、いまの見られ方を壊さない形に落とす必要も出てきます。
媒体の数と、拠点の数
Instagramだけなのか、YouTubeやMEOも同時に立ち上げるのか。媒体が増えれば設計も台本の型もその数だけ要ります。店舗や拠点が複数あるなら、撮影の段取りも拠点ごとに組むことになります。媒体と拠点は、初期費用をいちばん素直に押し上げる条件です。
企画と台本を、どこまで含めるか
方向を決めるところまでで終わるのか、繰り返し使える企画の型まで作るのか、初回分の台本まで書くのか。ここは提案書だと1行に見えますが、作業量の差はかなり大きいです。
撮影の回数と時間を、初期にどれだけ置くか
立ち上げの時点でまとめて撮っておく形にすると、初期は重くなりますが、その後しばらく素材に余裕ができます。逆に初期は撮影を置かず、運用に入ってから毎月撮る形もあります。初期に寄せるか、月額に寄せるかの違いなので、片方だけを見て高い安いは判断できません。
分析とレポートの形を、初期に設計するかどうか
どの数字を毎月見るのか、どういう形で報告するのかを最初に決めておくと、運用に入ってからの判断が速くなります。ここを初期に含める会社と、月額の中で都度やる会社があります。
どこまで丸投げにするか
確認をこちらでやるのか、依頼側でやるのか。投稿まで代行するのか、原稿の納品までなのか。依頼側の手が入る量が減るほど、初期の設計は厚くなります。任せる範囲が広いほど、始まる前に決めておくことが増えるからです。
初期費用が無い提示を、どう読むか
工程が無いのか、月額に入っているのか
初期費用が発生しないという提示を見たとき、確かめたいのはここです。設計の工程そのものが無いのか、それとも月額に含めているのか。どちらもあり得ます。
月額に含めている場合、月額はそのぶん厚くなっているはずです。長く続ける前提なら、初期に分けている形のほうが後半は軽くなります。短い期間で試したいなら、初期に大きな負担が無いほうが入りやすい。どちらが有利かは、どのくらい続ける前提かで入れ替わります。期間そのものの考え方はSNS運用代行の契約期間|月数ではなく、期間中に何が積み上がるかで比べるに書いています。
初期費用も月額も軽い場合に、自社へ残る仕事
この組み合わせのときは、設計の工程が省かれている可能性を考えたほうがいいと思います。省いていること自体が悪いのではなく、省いた場合は方向を決める仕事が自社側に残るということです。
誰に向けるかを自社で決めて指示できるなら、それで問題ありません。むしろ、決まっているのに外注先の設計工程に払うのは無駄です。決まっていない状態で頼むと、誰も決めないまま投稿だけが積み上がります。
「初期費用無料」に付いてくる条件を見る
期間限定で初期費用を無料にする提示があります。このとき見ておきたいのは、無料になる条件のほうです。最低契約期間が付いていたり、上位のプランが前提になっていたりします。
付いている場合、その期間ぶんの負担が実質的な条件です。浮いた行だけを見ずに、契約期間まで含めた形で読んでください。
初期費用の見積もりで食い違いやすい言葉
「アカウント開設費」に何が入っているか
アカウントを作るだけなら数分の作業です。それを初期費用として置いている場合、開設の作業そのものではなく、プロフィールの設計まで含んでいるはずです。どちらを指しているのかは、聞かないと分かりません。
「初期設定」がどこまでか
初期設定という言葉は幅が広いです。ビジネスアカウントへの切り替えだけを指す場合もあれば、投稿の見た目の基準を作るところまで指す場合もあります。言葉ではなく、成果物として何が納品されるかで確認するのが確実です。
「戦略設計」が資料として残るのか
設計をしたと言われても、それが口頭の説明だけで終わると、あとで確認できません。資料になって手元に残るのかどうかは、聞いておく価値があります。残る形になっていれば、契約が終わったあとも自社の材料として使えます。残らない形なら、その会社の中にしか無いということです。
見積もりを同じ土俵に並べるための手順
手順1:条件のほうを先に固定する
媒体、拠点の数、月に作る本数、撮影の回数と時間、確認する人の数。この5つを自分の側で決めてから、各社に同じ条件で出してもらいます。条件がばらばらのまま集めた見積もりは、並べても意味を持ちません。
手順2:内訳を、作業名ではなく納品物で出してもらう
「設計一式」と書かれていると比べられません。手元に何が残るのかを一覧にしてもらってください。設計の資料、プロフィールの原稿、企画の型、台本、撮影の進行表。この粒度になると、会社ごとの差がそのまま見えます。
手順3:含まれないものを先に聞く
含まれるものは提案書に書いてあります。書かれていないのは、含まれないもののほうです。撮影の交通費、素材の追加購入、確認回数を超えたときの修正、途中で方針を変えたときの再設計。ここを先に聞いておくと、後から増える項目が減ります。
初期費用について、そのまま聞ける質問
ここまでの話を、聞ける形にしました。月額の内訳ではなく、初期費用に絞った質問です。
- 初月の請求は、初期費用だけですか。月額も同時に発生しますか。初期費用の行だけでは初月の負担が分かりません。
- 初期費用は分割できますか。できる場合、分割による上乗せがあるかどうかも一緒に。
- 初期費用で作るものを、納品物として一覧にしてもらえますか。作業名ではなく、手元に残るものを聞きます。
- その納品物のデータは、契約が終わったあとも自社で使えますか。設計資料や台本の型が返ってくるかどうかです。
- すでにアカウントがある場合、初期費用は変わりますか。ゼロから作る場合と引き継ぐ場合で、作業量が違うためです。
- 媒体や拠点が増えると、初期費用はどう変わりますか。増減の向きだけでも聞いておくと、後の相談が速くなります。
- 初期費用の作業は、契約から何日くらいで終わりますか。初回投稿がいつになるかが、ここで決まります。
- 初期費用の期間中に、こちらが用意するものはありますか。写真素材、店舗情報、既存のロゴデータなど。
- 初期費用を払ったあと、1ヶ月目で解約した場合はどうなりますか。返金の有無ではなく、納品物が渡されるかどうかを聞きます。
- 設計の方針を途中で変えたくなったら、どうなりますか。再設計が別の項目になるのか、月額の範囲でやってもらえるのか。
この中で今日すぐ効くのは、9番だと思います。初期費用を払った直後にやめた場合、作ったものが手元に来るのか。ここを最初に聞いておくと、その会社が初期費用を何の対価として受け取っているかが分かります。納品物の対価だと考えている会社は、迷わず答えられるはずです。
初期費用を判断するときの順番
1. 設計が自社で決まっているかを先に見る
誰に向けて何を出すかが社内で決まっているなら、外注先の設計工程は薄くて構いません。決まっていないなら、そこに払う意味があります。自社の状態を先に見てから、初期費用の重さを見てください。見積もりの行から入ると判断できません。
2. 続ける期間の見立てを置く
初期費用は一度きりなので、続ける期間が長いほど1ヶ月あたりの負担は軽くなります。短期で終える前提なら重く、長く続ける前提なら軽い。同じ提示でも、意味が変わります。
ちなみに、反応が出ない期間は実際にあります。私が引き継いだ案件も、手応えが無い時期がしばらく続いたあとで動きました。だから期間の見立ては、短めに置かないほうがいいと思っています。
3. 条件を揃えてから、初めて横に並べる
初期費用と月額を別々に眺めても、どちらが自分に合うかは分かりません。手順1で固定した条件のまま、想定する契約期間ぶんに直して並べてください。初期に寄せている会社と、月額に寄せている会社では、どこで負担が発生するかが違うだけということもあります。ここまで揃えて、ようやく比較になります。
会社ごとに差が出る場所そのものについてはSNS運用代行の選び方|代行する側から見た、会社ごとに実務の中身が違う5つの場所に、媒体ごとの考え方についてはインスタ運用代行の料金|見積もりの差がどこから来るのかを分解するとショート動画の制作費用|何で金額が変わるのかを、1本単位と月額に分けて読むに書いています。
まとめ
初期費用は、投稿が始まる前に終わらせておく仕事への代金です。誰に向けるかを決め、アカウントを整え、撮影と投稿の段取りを作り、企画の型を用意する。繰り返さない作業なので、月額から分けています。
重さを動かしているのは、ゼロからか引き継ぎか、媒体と拠点がいくつあるか、企画と台本をどこまで含むか、撮影を初期にどれだけ置くか、分析とレポートを設計に含めるか、どこまで丸投げにするか。この6つです。条件が増えれば上がり、減れば下がります。
初期費用が無い会社と比べるときは、設計の工程を誰がやるのかを見てください。省いているなら、その仕事は自社に残ります。月額に入れているなら、続ける期間によって有利不利が入れ替わります。提示された行そのものではなく、何をどこに置いているかの違いとして読むと、比較できるようになります。
条件が固まっていない段階でも構いません。媒体と本数、撮影に出せる時間をお伝えいただければ、料金・お見積りのページから、条件を伺ってお見積りします。
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