SNS運用代行を頼むとき、準備するものは何ですか。この記事はその質問に答えます。
結論から書きます。準備するもので効くのは、パンフレットや過去の写真といった資料ではありません。ほとんどが「先に決めておくこと」です。撮影に出せる時間、写真の使い先、投稿を確認する人、預ける権限の範囲、そして続ける期間。この5つが決まっているかどうかで、見積もりの精度も、始まってからの速度も変わります。
そして、これらが決まっていると副産物がひとつあります。複数社を横に並べて比べられるようになることです。条件がそろっていない状態で3社から見積もりを取っても、それぞれ違う前提で書かれた紙が3枚届くだけで、比べようがありません。この記事の後半には、見積もりの金額が何で動くのか、同じ条件で並べるにはどう頼めばいいのかを置いています。
なお、比較そのものの観点はすでに別記事に書いていますので、ここでは「比べる前に自分の側で用意しておくもの」だけを扱います。
準備するもので、いちばん効くのは「素材」ではありません
会社案内や写真は、契約が決まってからで間に合います
依頼前に何を用意すればいいですかと聞かれたとき、多くの方が最初に思い浮かべるのは、会社案内やメニュー表、これまでに撮った写真のデータです。もちろんあれば助かります。ただ、これらは契約が決まってからでも間に合います。初回の打ち合わせで「あとで送ります」で問題なく進みます。
逆に、あとから決めようとすると止まるものがあります。それが、この記事で挙げる5つです。どれも社内の判断が要るもので、代行する側では決められません。
決まっていないと、見積もりが「幅」で返ってきます
撮影に何時間出せるかが決まっていない状態で見積もりを依頼すると、こちらは幅を持たせて出すことになります。月に2時間なのか6時間なのかで、作れる本数も、必要な人の時間もまったく違うからです。
幅のある見積もりを3社から受け取ると、比較は成立しません。安く見えた会社が、実は少ない撮影時間を前提にしていただけ、ということが起きます。条件をそろえてから声をかけると、この食い違いがほとんど消えます。
実際に受ける側から見て、着手が遅れる原因
私自身、クライアントの案件を引き継いで、コンセプトから作り直したことがあります。そのときも、動き出しの速さを決めたのは資料の量ではありませんでした。誰に確認を取ればいいのか、撮影にいつ入れるのか。ここがはっきりしている案件は、初月から手が動きます。
準備1:撮影に出せる時間と、その時間帯
「何時間」と「いつ」は別の質問です
撮影の時間について、決めておくことは2つあります。月に何時間出せるかと、その時間を何曜日の何時ごろに置けるかです。この2つは別の質問で、どちらか片方だけでは段取りが組めません。
月に4時間出せるという話でも、平日の日中しか無理なのか、土曜の朝なら空いているのかで、こちらの提案は変わります。人の出入りが多い時間帯を避けたいなら、なおさら先に共有しておく必要があります。
設営と撤収を含めた時間で数えてください
撮影時間として押さえておくべきなのは、カメラを回している時間ではなく、機材を出してから片づけ終わるまでです。ここを分けて考えていると、当日「思ったより長い」となります。
当社のプランでは、撮影時間に機材の設営と撤収を含めています。他社と比べるときは、この点が同じ数え方かどうかを確認してみてください。同じ「月4時間」でも、中身が違うことがあります。
時間を出せないなら、そもそも頼む形が変わります
撮影に時間を出すのが難しい場合は、撮影を含まない形を選ぶことになります。当社であれば、自社で運用しながら方針だけを相談する形がそれにあたります。どの形が合うかは条件によって変わるので、料金・お見積りのページから条件を伺ってお見積りします。
時間を出せないこと自体は、悪いことではありません。ただ、出せないまま撮影込みのプランを契約すると、月の途中で撮影日が消えて本数が減ります。先に言っておいたほうが、お互いにとって良い結果になります。
準備2:撮った写真と動画を、どこまで使いたいか
SNS以外で使う予定があるかどうか
撮影して作った素材を、SNSの投稿以外にも使いたいかどうかは、依頼の前に決めておいてください。自社サイト、印刷物、求人ページ、店頭の掲示。使い先があるなら、それを最初に伝える必要があります。
SNSに出す前提だけで作られた素材は、縦向きで、テロップが乗っていて、他の用途には流用しにくい形になっていることがあります。あとから「サイトにも使いたい」と言われても、撮り直しになる場合があります。
編集前のデータが要るかどうか
もうひとつ、編集前の素材を受け取りたいかどうかも決めておく項目です。完成した動画だけでよいのか、撮って出しのデータも欲しいのか。これは会社によって扱いが違います。
要るのであれば、見積もりを取る段階で条件に入れてください。あとから追加すると、条件の話をやり直すことになります。
契約が終わったあとの扱い
解約したあと、それまでに作った素材を使い続けられるかどうかも、先に決めておく項目です。これは希望を持っておけばよく、答えを持っている必要はありません。「終わったあとも使いたい」と伝えられれば十分です。
この扱いは会社ごとに差が出る場所なので、比較の欄として使えます。
準備3:投稿を確認する人と、その回数
確認して出す判断をする人を、1人に決めておく
投稿の内容を確認して、出していいと判断する人を1人決めておいてください。複数人で回す形にすると、その人数ぶん時間がかかります。3人が見る体制なら、1本の投稿が出るまでに3回待ちが発生します。
これは代行を頼んでも減らない仕事です。外に出したのに社内の負荷が思ったほど減らないという話は、ここが原因であることが多いです。
確認は「1本ずつ」か「まとめて」か
確認のやり方も決めておくと、進みが速くなります。1本ずつ確認するのか、月の初めにまとめて確認するのか。まとめて見る形にできるなら、そのほうがお互いに負担が軽くなります。
月に8本作る場合、1本ずつ確認だと月8回のやり取りになります。まとめて2回にできれば、それだけで往復が減ります。これは今日決められることのひとつです。
返事にかかる日数を、正直に伝えてください
確認を頼まれてから返事をするまでに、実際どのくらいかかるか。ここは見栄を張らずに伝えてください。「2日で返します」と言って1週間かかると、投稿の予定が全部ずれます。
1週間かかるなら、1週間かかる前提で組みます。それだけの話です。
準備4:預ける権限の範囲を、どこまでにするか
アカウントを新しく作るのか、既存を渡すのか
すでに運用しているアカウントがあるかどうかで、準備するものが変わります。既存のアカウントを使うなら、ログイン情報の所在を確認しておいてください。担当していた人が退職していて誰も入れない、というのは実際によくある話です。
新しく作る場合は、その手前で決めることがあります。誰の名義で作るか、電話番号やメールアドレスは誰のものを使うか。ここを代行側の情報で作ってしまうと、終わったときに面倒になります。
投稿までやってもらうのか、原稿の納品までか
投稿の操作まで代行してもらうのか、原稿をもらって自社で投稿するのか。この2つでは預ける権限が違います。原稿の納品までなら、アカウントの権限を渡す必要はありません。
社内の規定でアカウント情報を外に出せない場合は、原稿納品の形を選ぶことになります。先に社内で確認しておくと、契約直前で止まらずに済みます。
コメントやDMへの返信を任せるか
投稿とは別に、コメントやDMへの返信を任せるかどうかも決めておく項目です。任せるなら、返していい範囲を決める必要があります。価格の質問には答えていいのか、予約の受付までやるのか。
ここは業種によって答えが変わります。決めきれなくても構いませんが、「決めていない」と自覚しておくだけで、打ち合わせの質が変わります。
準備5:どのくらいの期間、続ける前提か
反応が無い期間は、実際にあります
私がクライアントの案件をコンセプトから作り直したとき、伸びるまで手応えは一切ありませんでした。やっている最中は、効いているのかどうか分からないままでした。しばらく続いたあとで、急に来ました。
この経験があるので、私は反応が無い期間をすぐに失敗とは考えないようにしています。ただ、これは依頼する側にとっても同じ話で、その期間を耐えられる前提で始めているかどうかが問われます。
月額ではなく、期間をかけた総額で置いてみる
準備として具体的にできるのは、月ごとの支払いだけを見ずに、続ける月数をかけた総額で予算を置いてみることです。半年続ける前提なら、半年ぶんをまとめて見て判断します。
月ごとの数字だけで見ると払える範囲でも、期間をかけた総額で見ると話が変わることがあります。逆に、総額で見て問題ないなら、途中で不安になりにくくなります。これは依頼前の今日、電卓ひとつでできます。
短い期間しか見ていないなら、形を変えたほうがいい
3ヶ月で結果が出なければやめる、という前提であれば、撮影込みの運用代行は向きません。その場合は、自社で運用しながら方針だけ相談する形のほうが、総額を抑えられます。
この判断については、別の記事で条件を分けて書いています。
見積もりの数字が動いているのは、この7つの条件です
ここまでの5つを決めると、次は「では、いくらになるのか」が気になります。ただ、その前に知っておくと読み方が変わることがあります。見積もりの数字は、会社の値付けよりも先に、条件で動いています。どの条件が増えると上がり、どれを減らすと下がるのか。向きが分かっていれば、届いた紙を自分で分解できます。
制作本数:いちばん大きく動く条件です
月に何本作るかは、そのまま作業の量です。本数が増えれば上がり、減れば下がります。しかも本数は、企画・撮影・編集・確認のすべてに掛け算で効きます。本数の記載がない見積もりは、この掛け算ができません。まずここを確かめてください。
撮影の回数と、1回あたりの時間
同じ本数でも、1回の撮影でまとめて撮るのか、月に何度も足を運ぶのかで前提が変わります。回数が増えるほど上がり、まとめて撮るほど下がる方向です。ここに設営と撤収が含まれているかどうかで、同じ時間数でも中身が変わります。
出張と拠点数
店舗が1つなのか複数なのかは、単純に倍で効いてくる条件です。距離が遠ければ移動の時間も乗ります。拠点が増えると上がるのは避けようがないので、増やすなら「全拠点を毎月」ではなく「順番に回る」といった形で調整することになります。
媒体で、必要な工程が変わります
Instagramのリールと、YouTube、Googleビジネスプロフィールでは、作るものも工程も違います。動画の尺が長くなるほど編集の手が増え、地図まわりの整備は撮影より確認と更新の作業が中心になります。媒体を増やすと上がるのは、単に投稿先が増えるからではなく、それぞれ別の工程が要るからです。
企画と台本を含むか、素材を渡して編集だけか
こちらが素材を渡して編集だけを頼む形と、企画から台本まで作ってもらう形は、別の商品です。企画と台本を含めば上がり、素材を用意できるなら下がります。ここを分けずに比べると、比較そのものが成り立ちません。
分析とレポートを含むか
数字を毎月まとめて報告するかどうかも、作業として乗るか乗らないかの差になります。含めれば上がりますが、含めないと「何が起きたか」が手元に残りません。安く見える見積もりは、ここが外れていることがあります。
どこまで丸投げするか
最後に、社内でどこまでやるかです。確認だけをこちらが持つのか、原稿づくりも一部持つのか。社内で持つ範囲が増えれば下がり、全部を外に出せば上がります。準備1から準備4で決めたことが、そのままこの条件になります。
見積もりの取り方:同じ土俵に並べるための3手順
手順1:条件を1枚に書いて、全社に同じものを渡す
準備で決めた5つを、そのまま1枚に書いてください。撮影に出せる時間と時間帯、素材の使い先、確認の人数と返事にかかる日数、預ける権限の範囲、続ける前提の期間。この1枚を全社に同じ内容で渡します。
これをやるだけで、届いた見積もりの差が「会社の差」として読めるようになります。条件が各社バラバラのまま集めた紙は、どれだけ並べても比べられません。
手順2:内訳を分けて出してもらう
ひとまとめの数字ではなく、一度だけ発生するものと、毎月繰り返すものを分けて書いてもらってください。さらに、毎月のほうは「撮影」「編集」「投稿の運用」「レポート」くらいまで割ってもらえると、どこに手がかかっているのかが見えます。
分けてもらえない場合、それ自体が情報になります。中で何を数えているかが決まっていないか、まだ決めていないかのどちらかです。
手順3:含まれないものを、先に聞く
入っているものより、入っていないものを聞くほうが早いです。撮影の追加、修正の回数、交通費、素材の買い足し、投稿の代行、レポートの作成。ひとつずつ「これは含まれますか」と聞いていけば、範囲の線が引けます。
この質問に対する答え方も比較の材料になります。すぐに線を引ける会社は、日ごろから範囲を決めて仕事をしています。
この準備が効く場面と、要らない場面
効くのは、複数社を比べるつもりのとき
ここまでの内容は、複数の会社に声をかけて比べるつもりの方に向いています。条件をそろえておくと、届いた見積もりの差が読めるようになるからです。
1社に決めているなら、ここまでは要りません
すでに依頼先が決まっていて、その1社に任せると決めているなら、ここまで準備しなくても進みます。打ち合わせの中で順に決めていけば足ります。この記事は、比べる段階の方のためのものです。
まだ「外注するか自社でやるか」を迷っている段階なら
外注するかどうか自体を迷っている段階であれば、この準備よりも先に決めることがあります。そちらは別の記事で扱っています。
持ち帰れるパーツ:候補を横に並べて比べるチェック表
準備が終わったら、次は比較です。見る欄を先に決めておくと、届いた提案書を同じ物差しで読めます。下の欄を横軸にして、A社・B社・C社を縦に並べてください。
そろえる欄(この10項目を埋める)
- 制作本数が数で書かれているか(月何本/記載なし)
- 撮影時間に設営と撤収が入っているか(入っている/別途/記載なし)
- 撮影の時間帯に条件があるか(平日日中のみ/土日可/夜間可)
- 編集前の素材を受け取れるか(渡す/渡さない/別途)
- SNS以外での使用が認められるか(自由/用途を限定/不可)
- 解約後の素材の扱い(使い続けられる/不可/記載なし)
- アカウントの権限をどこまで求められるか(管理権限/投稿権限/不要)
- 確認の回数と締切(月何回/何日前までに返事が必要か)
- コメント・DM対応の有無と範囲(含む/含まない/オプション)
- 交通費・宿泊費の扱い(込み/実費別途/記載なし)
「記載なし」の数を数えてください
この表を作ると、多くの提案書で「記載なし」の欄が出ます。記載なしの数そのものが、比較の材料になります。数が多いほど、始まってから決めることが多いということです。
ただし、記載なしが悪いとは限りません。個別に設計するために書いていない場合もあります。だからこそ、数えたうえで、その欄を質問に回せばいいという話です。空欄が可視化されていれば、聞き漏らしが減ります。
金額の欄は、いちばん最後に埋めてください
ひとつだけ順番の提案をします。金額の欄は、上の10項目を埋め終わってから最後に書き込んでください。先に数字を入れると、そこに引っ張られて他の欄を読む目が甘くなります。
条件がそろっていない状態の数字は、比較の材料になりません。順番を変えるだけで、同じ紙から読み取れるものが変わります。
当社は一律の料金表を置いていません。本数・撮影の回数と時間・拠点数・媒体・企画と台本の範囲・レポートの有無で必要な作業が変わるので、料金・お見積りのページから条件を伺ってお見積りします。
この記事と近い話は SNS運用代行の選び方|代行する側から見た、会社ごとに実務の中身が違う5つの場所/SNS運用代行と自社運用はどっち?外注する前に決まる5つの条件/SNS運用代行の契約期間|月数ではなく、期間中に何が積み上がるかで比べる/SNS運用代行の費用相場|何で金額が変わるのかを、媒体ごとに読み分ける にも書いています。
まとめ:準備するものは、書類ではなく決めごとです
最初の質問に戻ります。SNS運用代行を頼むとき、準備するものは何か。答えは「社内でしか決められない5つを、先に決めておくこと」です。
- 撮影に出せる時間と、置ける時間帯
- 撮った素材を、SNS以外のどこまでで使いたいか
- 投稿を確認する人と、その回数と返事にかかる日数
- 預ける権限の範囲(投稿までか、原稿までか)
- 続ける前提の期間と、その期間をかけた総額
資料は契約が決まってからでも間に合います。決めごとは、決まっていないと見積もりが幅になり、比較が成立しません。
そして、この5つが決まると、そのまま「見積もりを動かしている条件」に重なります。本数、撮影の回数と時間、拠点、媒体、企画と台本、レポート、そしてどこまで丸投げするか。比べる準備というのは、相手を調べることではなく、自分の条件を先に固めることです。今日できるのは、続ける期間をかけた総額を電卓で出してみることと、確認する人を1人に決めることの2つです。どちらも打ち合わせを待たずに終わります。
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