答えを先に:学習塾の提案書は、投稿の外にある4つの線引きで差がつきます
この記事が答える質問は1つです。「学習塾がSNS集客を外注するとき、提案書のどこを比べれば判断できるのか」。
答えは、次の4つです。
- 投稿を、保護者と生徒のどちらに向けるか
- 生徒が写る素材の同意を、誰がどう取るか
- 合格実績や成績の数字を、誰が確かめるか
- 塾の暦のどこで撮り、どこで撮らないか
投稿の本数や媒体の数は、どの提案書にも書かれています。差が出るのは、書かれていないことが多いこの4つです。
根拠にしているものと、していないもの
先にお伝えしておきます。この記事は、学習塾での運用実績を根拠にしていません。
根拠にしているのは、私が運用代行として受けている作業の中身です。企画と台本の作成、編集の指示、投稿作業、月次の分析。この4つを受ける側から見て、塾という業種で条件が変わる場所を書き出しました。
法律や業界の基準については、私は専門家ではありません。該当する箇所では「誰が確かめるかを決めてください」という書き方にとどめます。内容は2026年10月時点のものです。
手元の状況によって、この記事の使いどころが変わります
生徒の撮影について一行も書かれていない提案書がある場合
この記事がいちばん役に立つ状況です。書かれていないのは、不要だからではなく、まだ決めていないからであることが多いです。下の4つの分かれ目を、そのまま質問として返してください。
募集を止めている学年がある場合
定員が埋まっている学年に向けて投稿を増やしても、受け入れる席がありません。どの学年の、どの時期の募集に効かせたいのかを先に決めてください。そこが決まると、外注する範囲が小さくなることがあります。
対象の学年と教科が、まだ絞れていない場合
この段階では、見積もりを取っても幅のある答えしか返ってきません。先に決めるのは外注先ではなく、塾の中の方針です。比較はそのあとで間に合います。
分かれ目1:見て決めるのは保護者で、通うのは生徒です
誰に向けるかで、撮るものが変わります
学習塾は、申し込む人と通う人が別であることが多い業種です。小学生や中学生では、決めるのは保護者です。高校生になると、本人が探して保護者に相談する形も出てきます。
保護者に向けるなら、知りたいのは教室の様子、講師の人柄、通い始めたあとの連絡の取り方です。生徒に向けるなら、授業の雰囲気や自習室の使い方になります。同じ教室を撮っても、切り出す場面が違います。
提案書に「ターゲット:地域の小中高生と保護者」とまとめて書かれていたら、どちらを主にするのかを聞いてください。両方に向けると、台本が2系統になります。作業の量もそのぶん増えます。
出口は、入塾ではなく手前の一歩に置きます
投稿を見てすぐ入塾を決める方は多くないと考えたほうが安全です。次の一歩は、資料請求、体験授業、面談のどれかになります。段差の低い順に並べると、資料請求、体験授業、面談です。
確かめたいのは、プロフィールから出る先がどれに設定される提案か、です。そして、その申し込みが届いたあと、誰が何日以内に返すのか。ここは外注先の作業に入っていないことが多いので、塾の側の担当を名前で決めておきます。
分かれ目2:写るのは未成年の生徒です
同意を出すのは、本人ではなく保護者です
授業の様子を撮ると、生徒が写ります。未成年ですので、掲載の同意は保護者から取ることになります。入塾時の書類に項目を入れているのか、撮影のたびに取るのかで、手間がまったく違います。
提案書で見る場所は3つです。
- 同意の書面を用意するのは、塾か外注先か
- 同意の無い生徒が写り込んだ素材を、誰が見つけて外すか
- 顔を出さない撮り方にする場合、その判断を誰がするか
同意の有無を知っているのは塾の側だけです。外注先が現場で一人ずつ見分けることはできません。撮影の日に「この席から後ろは写さない」と指示できる人が、教室に要ります。
顔を隠しても、学校と名前が分かることがあります
後ろ姿や手元だけの撮影でも、情報は写ります。制服、校章、通学かばん、名札、ノートの表紙の名前、答案の氏名欄、壁に貼った成績の掲示。どれも、学校や個人につながります。
編集の段階で消すのか、撮る前に片づけるのか。消す作業を見積もりに含むのか。ここを聞くと、外注先がこの業種の撮影をどこまで想定しているかが分かります。
退塾や卒業のあと、投稿をどうするか
生徒は数年で入れ替わります。退塾した生徒や卒業した生徒が写った投稿を、残すのか下げるのか。保護者から「消してほしい」と連絡が来たとき、誰が何日で対応するのか。
契約の期間が終わったあとにこの依頼が来ることもあります。そのとき投稿を触れる権限が塾の側に残っているかも、あわせて確かめてください。
分かれ目3:合格実績と成績の数字を、誰が確かめるか
数え方の条件を持っているのは塾の側です
合格者の人数や、点数が上がったという話は、塾の発信でよく使われる材料です。同時に、表示のしかたが問われる領域でもあります。学習塾の業界団体には、合格実績の表示についての自主的な基準があります。景品表示法にも関わります。最新の内容は、公式の情報で確かめてください。
外注先が持てないのは、数字の元になる記録です。どの年度の数字か。在籍していた期間の条件はあるか。講習だけ受けた生徒を含むか。これを答えられるのは塾だけです。
ですから、提案書に「実績の訴求」と書かれていたら、次の2つを聞いてください。
- 数字の元になる資料は、誰が出すのか
- 表示が基準に沿っているかの最終確認は、どちらがするのか
確認の往復が、月に何回まで含まれるか
数字を扱う投稿は、原稿の確認に時間がかかります。塾長の確認が1回で済むのか、本部の確認が別にあるのか。往復が増えると、同じ本数でも作業は重くなります。
見積もりに確認の回数が書かれていなければ、上限を聞いておきます。あとから「修正は別途」と言われる行き違いを避けるためです。
分かれ目4:塾の暦が、撮れる日を決めます
教室に人がいる時間と、撮れる時間
多くの塾では、授業は夕方から夜に集まります。授業中に撮れば生徒が写ります。授業の前に撮れば教室は空ですが、雰囲気は伝わりにくくなります。
どちらで撮る提案なのかを聞いてください。授業中に入るなら、分かれ目2の同意の話がそのまま付いてきます。授業前に講師だけで撮るなら、講師がその時間に来られるかが条件になります。
講習の前に、作業が前倒しで増えます
募集が動く時期は、季節の講習と新年度の前です。告知は、申し込みの締め切りよりかなり前に出し始める必要があります。つまり、制作の山は募集の山より前に来ます。
毎月同じ本数で契約すると、いちばん出したい時期に本数が足りなくなることがあります。月ごとに本数を動かせるか、動かしたときの扱いがどうなるかを、契約の前に確かめてください。
撮らないと決めておく時期
入試の直前や定期テストの前は、生徒も講師も余裕がありません。この時期は撮影を入れないと先に決めておくほうが、現場の負担が減ります。そのぶん、前の月にまとめて撮っておく段取りが要ります。1回の撮影で何本ぶんを撮る想定かを聞いてください。
費用の重さは、何で動くのか
金額そのものは、この記事には書きません。条件によって変わりすぎるためです。代わりに、何が増えると重くなり、何が減ると軽くなるかを書きます。
重くなる向きの条件
- 教室の数が増える(撮影の行き先と、確認する相手が増えます)
- 撮影に来てもらう回数と、1回の時間が増える
- 生徒が写る素材を使う(同意の照合と、写り込みを消す作業が乗ります)
- 保護者向けと生徒向けの2系統で作る
- 動画の本数が増える、話し言葉とテロップが入る
- InstagramのほかにGoogleビジネスプロフィールやYouTubeも任せる
- 企画と台本、月次の分析とレポートまで含める
軽くなる向きの条件
- 講師が自分で撮った素材を渡し、編集と投稿だけを頼む
- 生徒を写さず、講師と教室と教材だけで作る
- 向ける相手を保護者だけに絞る
- 確認する人を1人に決め、往復の回数を先に決める
同じ条件で並べるための手順
今日から使える手順です。見積もりを頼むときに、次の順で進めてください。
- 教室数、対象の学年、向ける相手、生徒を写すかどうかを1枚に書き、全社に同じものを渡す
- 撮影、制作、投稿、分析の内訳を、行を分けて出してもらう
- 「含まれないもの」を先に聞く。同意書の用意、写り込みの修正、実績表示の確認が入っているか
- 講習前に本数を増やした月の扱いを聞く
依頼文の揃え方そのものは、SNS運用代行の相見積もり比較の記事に書いています。
当社にご相談いただく場合は、条件を伺ってお見積りします。流れは「料金・お見積り」ページにまとめています。
持ち帰れるパーツ:学習塾の1か月の運用スケジュール例
ここからは例です。実際の塾の記録ではなく、上の4つの分かれ目を1か月の予定に落としたものです。月の後半に定期テストがある月を想定しています。ご自身の塾の暦に合わせて、週を入れ替えてお使いください。
第1週:決める週
- 今月の募集の対象を1つに決める(学年と、講習か通常授業か)
- 掲載の同意がある生徒の一覧を、塾の側で最新にする
- 使う予定の実績の数字と、その元資料を塾から外注先へ渡す
- 外注先から、今月ぶんの企画と台本の案が届く
第2週:撮る週
- 撮影の前に、教室の掲示物と名前の出ているものを片づける
- 授業前の時間に、講師の話と教室の様子を撮る
- 授業中に入る場合は、写してよい席を塾の担当がその場で指示する
- 翌月がテスト前や入試前に当たるなら、翌月ぶんもここで撮りためる
第3週:確かめて出す週
- 編集された素材を塾の担当が見て、制服、名札、答案の写り込みを確かめる
- 実績の数字が入る投稿は、元資料と突き合わせてから承認する
- 承認したものから順に投稿する
- 体験授業や資料請求の受付先が、実際に届く状態かを塾の側で試す
第4週:撮らない週と、数える週
- 定期テスト前のため、撮影は入れない。投稿は撮りためた分で続ける
- 資料請求、体験授業、面談の件数を、どこから来たかと合わせて塾の側で記録する
- 月次の報告を受け取り、届いた人数と申し込みの件数を並べて見る
- 退塾した生徒が写る投稿がないかを確かめ、あれば扱いを決める
この予定で見ていただきたいのは、塾の側の作業が毎週あることです。全部を任せる契約でも、同意の一覧、数字の元資料、申し込みの記録は塾に残ります。
この記事と近い話は SNS運用のKPI設定|外注先の提案を自分で判定するための物差しの作り方/SNS運用代行を頼む前に準備するもの|依頼側で先に決めておく5つ にも書いています。
まとめ:比べる場所は、本数の欄の外にあります
最初の質問に戻ります。学習塾がSNS集客を外注するとき、提案書のどこを比べれば判断できるのか。
比べる場所は4つです。誰に向けるか。生徒が写る素材の同意を誰が取るか。実績の数字を誰が確かめるか。塾の暦のどこで撮るか。
この4つに答えが書かれている提案書どうしなら、並べて比べられます。書かれていない提案書は、まだ条件が決まっていない状態です。良し悪しを決める前に、同じ質問を全社に返してみてください。返ってきた答えが、そのまま判断の材料になります。
制度や基準に関わる部分は、変わることがあります。最新の内容は公式の情報で確かめてください。
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