リール制作を外注するとき、見積もりの金額が何を数えているのか。この記事はその一つの質問にだけ答えます。
先に結論を書きます。リールの見積もりを重くしているのは、多くの場合完成した本数そのものではなく、1本が完成するまでに発生する往復の回数と、素材が誰の手から出てくるかです。そして、この2つは見積書の欄に書かれないことがあります。だから同じ本数の見積もりを2社から取っても、比べたことになりません。
私は独立してすぐの時期、動画の編集を受ける側でした。いまは自分のアカウントで撮影も編集も分析もやりながら、業務委託でインスタグラムの運用にも入っています。受ける側と出す側の両方を見てきたので、金額が動く場所も、金額に出ないまま残る作業も、だいたい同じところに現れると分かってきました。その場所を順番に書きます。
なお、この記事に金額は書きません。当社の料金も、世の中の相場も出しません。条件によって答えが変わるものを一つの数字にすると、比べる材料としてはかえって使いにくくなるからです。代わりに「何が増えると重くなるのか」という向きだけを書きます。具体的な金額が必要な場合は、料金・お見積りのページから条件を伺ってお見積りします。
見積もりを重くしているのは、本数よりも1本あたりの往復です
同じ本数でも、確認の回数が違えば別の仕事になります
リールを月に何本、という数え方は分かりやすいのですが、実務の重さはそこだけでは決まりません。1本作って、見てもらって、直して、また見てもらう。この往復が1回で終わる現場と、3回続く現場では、同じ1本でも中に入っている時間がまったく違います。
往復が増える原因は、たいてい制作側の腕ではありません。確認する人が複数いる、確認の基準が言葉になっていない、直してほしい箇所が「なんとなく違う」で戻ってくる。このどれかです。ここは依頼する側で減らせる部分でもあります。
受ける側だったとき、単価は尺で決まっていました
独立して最初にもらったのはクラウドソーシングの動画編集でした。そのときの受け方は、動画の長さによって金額が変わる形でした。つまり、見積もりの根拠になっていたのは尺だけで、何回直すかは金額の中に入っていませんでした。
受ける側から見ると、往復が想定より増えた分はそのまま自分の時間から出ていきます。これは長く続けにくい形です。逆に言えば、修正の扱いが書かれている見積もりは、続ける前提で作られていると読めます。書かれていないほうが安く見えることもありますが、安い理由が「往復を数えていないから」なら、後で条件の話し直しが起きます。
連絡が途切れると、費用の話にも到達しません
その最初の案件は、相手からすぐ連絡が来なくなって終わりました。私の側も、提案の資料を見てもらったのに、そのあと自分からリマインドできずに終わったことがあります。人と話すのが得意ではなく、いまでも苦手なままです。
だから外注先を選ぶとき、返事の速さや、返事が来なかったときにどうなるかを、金額と同じ列に並べて見ておいてほしいと思っています。作業の質より先に、そこで止まることがあります。
費用を比べる前に、自分が買おうとしているものを一言で決めてください
形1:撮ったものを渡して、切ってもらう
素材が自分たちの手元にあり、それを見られる形にしてもらう買い方です。金額は素材の量と完成尺に引っ張られます。渡す素材が整理されているほど軽く、撮りっぱなしのデータをそのまま渡すほど重くなります。
形2:撮るところから来てもらう
撮影が入ると、金額の中心は編集ではなく拘束される時間に移ります。移動の距離、撮影にかかる時間、その日に何本ぶんの素材を撮るか。ここが動くと、完成本数が同じでも見積もりは変わります。
形3:企画から任せて、出すところまで持ってもらう
何を撮るかを決める工程と、出来上がったものを投稿する工程まで含める買い方です。ここまで来ると、もう「リール制作」という単品ではなく運用の一部になります。比べる相手も、制作単価ではなく運用の見積もりになります。
この3つは名前が似ているだけで、別の商品です。自分がどれを買おうとしているかを先に決めないまま複数社に声をかけると、返ってきた見積もりが最初から比べられない形になります。
金額を動かしている条件を、リールに絞って書き出します
素材が「もうある」のか「これから撮る」のか
いちばん大きく動くのがここです。すでに撮ってあるものを使うなら、撮影の時間は見積もりに乗りません。これから撮るなら、撮影の回数と1回の長さがそのまま重さになります。減らしたいなら、1回で複数本ぶんを撮れる形にできないかを相談するのが早いです。
1本の尺と、話し言葉が入るかどうか
尺が伸びれば重くなります。それに加えて、人が話す音声が入るかどうかで作業が変わります。話し言葉が入ると、聞き取って文字にする工程と、言い間違いを整える工程が足されます。無音で映像とテロップだけで組む形とは、同じ尺でも中身が違います。
テロップの中身を、誰が確かめるか
テロップの入れ方そのものより、そこに書かれた内容が正しいかを誰が保証するのかのほうが、実務では重い論点です。商品名、価格に関する表記、営業時間、資格や許認可に関わる言葉。制作側は渡された情報の通りに置くだけなので、正しさは依頼側に残ります。ここを制作側に持ってもらうなら、確認の工程が足されます。
音をどこで付けるかは、納品の形に関わります
リールは、動画ファイルに音を入れて書き出す形と、投稿するアプリの側で音を付ける形があります。どちらにするかで、納品されるデータの中身と、投稿するときの手順が変わります。仕様は変わることがあるので、最新の扱いは公式のヘルプで確認したうえで、外注先にも「音はどちらで付ける前提か」を聞いてください。ここが食い違うと、納品を受けてから手戻りが出ます。
表紙にあたる画像を作るかどうか
リールは一覧に並んだときの見え方があります。そこに出す画像を制作側で作るのか、動画の中の1コマをそのまま使うのか。作るなら1本ごとに作業が足されますし、文字を載せるなら上のテロップと同じ確認の話が発生します。見積もりの項目に出ていないことが多い場所です。
作り直しの回数が、どこまで決まっているか
最初に書いた往復の話が、金額の条件としてここに戻ってきます。回数に上限があるのか、上限を超えたらどうなるのか。決まっていないほうが親切に見えますが、決まっていない状態は、揉めたときに基準が無いということでもあります。
見積書に出てこないのに、依頼する側に残る仕事があります
撮る時間を空ける仕事は、外に出せません
撮影に来てもらう形にしても、その時間に現場を空けるのは依頼側の仕事です。誰が立ち会うのか、その人はその時間に他の仕事を止められるのか。ここは金額に出ないまま、確実に自社の時間を使います。
「編集の指示」という工程は、実際に存在します
これは私が今まさに手を動かしている部分なので、はっきり書けます。私が業務委託で受けている作業は、企画と台本の作成、編集の指示、投稿作業、月次の分析です。編集そのものではなく、編集の指示が独立した工程として一つ立っています。
つまり、編集を外に出しても、「どう編集してほしいかを言葉にして渡す」仕事は消えません。誰かがやります。それを外注先がやってくれる契約なら見積もりは重くなり、依頼側でやるなら見積もりは軽くなりますが、自社の時間は減りません。安く見えた見積もりの差が、実はこの工程の場所の違いだった、ということが起こります。
出す判断と、出したあとに答える仕事
納品されたものを出してよいと決めるのは依頼側です。そして出したあとに来る質問や問い合わせに答えるのも、多くの場合は依頼側です。制作の見積もりには入りません。ここまで含めて数えないと、外注しても手が空かなかった、という感想になります。
見積もりを横に並べるための、そろえ方
本数と尺を、こちらから指定して出してもらう
各社の得意な形で出してもらうと、必ずばらばらになります。月に何本、1本あたり何秒程度、撮影は月に何回、という条件をこちらで固定して、同じ紙で出してもらってください。この一手間だけで、比較できる状態にかなり近づきます。
内訳を、撮る・作る・出すの3つに割ってもらう
合計だけの見積もりは比べられません。撮影にかかる分、制作にかかる分、投稿や運用にかかる分。この3つに割ってもらうと、どこが厚い会社なのかが見えます。割れないと言われた場合は、その理由を聞いてください。理由の答え方にも情報があります。
入っていない項目を、一覧の形で出してもらう
入っているものは提案書に並びます。入っていないものは、聞かないと出てきません。「この見積もりに含まれないものを、箇条書きで書いてください」と依頼するのがいちばん早いです。ここに撮影の追加や、修正の超過分や、素材の受け渡し方法が出てきます。
ここまでの読み方が合う場合と、合わない場合
合うのは、続けて出す前提がある場合です
毎月ある程度の本数を出し続けるつもりなら、往復の回数や、指示を誰が書くかは、月を追うごとに効いてきます。ここを先に決めておくほど後が軽くなります。
1本だけ作りたい場合は、比べる意味が薄くなります
単発で1本だけなら、仕組みの話より、その1本を期限までに仕上げてもらえるかどうかのほうが大事です。この記事の並べ方はあまり役に立ちません。作りたいものに近い制作物を出している相手に、直接頼むほうが早いと思います。
反応が出るまでの期間を、どう見ておくか
これは費用の話とは別ですが、判断に効くので書いておきます。私が引き継いだ案件をコンセプトから作り直したとき、伸びるまで手応えは一切ありませんでした。やっている最中は、効いているのかどうか分からないままでした。それが後になって動いて、クライアントも私も驚きました。
だから私は今も、反応が無い期間をすぐ失敗とは読まないようにしています。逆に言えば、短い期間で結果が出ることを前提に費用を組むと、判断を誤ります。どのくらい続けるつもりかを先に決めてから、その期間で払える形かどうかで見てください。
持ち帰れるパーツ:リール制作の見積もりを取るときに聞く質問リスト
そのまま送って使える形にしました。上から順に聞く必要はありません。気になる列だけ抜いて使ってください。
素材と撮影について聞くこと
- こちらで撮った素材を渡す場合、どんな形式で、どうやって渡せばよいですか。
- 渡す素材の量に、上限や目安はありますか。多すぎると追加になりますか。
- 撮影に来ていただく場合、1回で何本ぶんの素材を撮る想定ですか。
- 撮影した元のデータは、こちらでも受け取れますか。
制作の中身について聞くこと
- 1本の尺は、どのくらいを標準としていますか。長くなると扱いは変わりますか。
- 話し言葉の音声が入る場合、聞き取って文字にする作業は含まれますか。
- テロップに載せる情報の正しさは、どちらが確認する前提ですか。
- 音は、動画に入れて書き出す形ですか。投稿するときに付ける形ですか。
- 一覧に出る表紙の画像は、作っていただけますか。それは何本ぶん含まれますか。
- どんな編集にするかの指示は、どちらが作る前提ですか。こちらから渡す形なら、何を書いて渡せばよいですか。
往復と納品について聞くこと
- 作り直しは何回まで含まれますか。それを超えた場合はどうなりますか。
- 直してほしい箇所は、どんな形で伝えればよいですか。決まった書き方はありますか。
- 初回の1本ができるまでに、どのくらいの日数を見ておけばよいですか。
- 納品されるのは、どんなファイルですか。投稿できる状態ですか。
- この見積もりに含まれないものを、箇条書きで書いていただけますか。
今日から使える判断材料を一つだけ選ぶなら、いちばん最後の質問です。含まれないものの一覧が返ってくるかどうかで、その相手が範囲を決めて仕事をしているかが分かります。金額の比較より先に、ここで差が出ます。
この記事と近い話は ショート動画の制作費用|何で金額が変わるのかを、1本単位と月額に分けて読む/インスタ運用代行の料金|見積もりの差がどこから来るのかを分解する/リールの再生数が伸びない|外注先を比べる前に、上から順に切り分ける にも書いています。
まとめ
リール制作の外注費用は、何を数えているのか。答えは、完成した本数ではなく、素材がどこから出てくるかと、1本が仕上がるまでの往復です。そしてもう一つ、見積書には出ないまま依頼側に残る仕事があります。撮る時間を空けること、編集の指示を言葉にすること、出す判断をすること。この3つです。
だから比べ方は単純です。本数と尺をこちらで指定して同じ紙で出してもらい、内訳を撮る・作る・出すに割ってもらい、含まれないものを一覧でもらう。この3つをやると、金額の差が「範囲の差」なのか「単価の差」なのかが見えます。見えてしまえば、あとは自分たちの事情に合うほうを選ぶだけです。
条件によって答えが変わる部分は、どうしても残ります。そこは実際の本数や撮影の頻度を並べたうえで、個別に詰めるのが確実です。
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