先に結論です。リールの再生数が伸びないとき、原因は「投稿の質」という一つの塊ではありません。配られていない/配られたけれど見られていない/見たけれど最後まで残らない/残ったけれど次に繋がらないという、順番のある詰まりのどれかです。そして上の層が詰まっているうちは、下の層をいくら直しても数字は動きません。
この記事が答えるのは、ひとつだけです。「自分のリールは、どの層で止まっているのか」を自分で判定するにはどうすればいいか。
私はSNS運用代行として、実際に自分で撮って編集して分析までやっています。そのうえで正直に書くと、伸びない時期の判定をいちばん間違えやすいのは、外注する側ではなくやっている側のほうです。私自身、引き継いだ案件で手応えがまったく無い期間が続いたことがあります。そのときも「内容が悪い」と決めつけかけました。実際は違って、あとから急に伸びました。何が効いていたのかを言えるようになったのは、層で切り分ける見方を持ってからです。
「再生数」という数字が、そもそも1つの数字ではありません
再生数は、配信量と反応率の掛け算です
再生数は結果です。ざっくり言えば「何人の画面に配られたか」×「配られた人のうち再生に至った割合」で決まります。掛け算なので、どちらかがゼロに近いと結果もゼロに近づきます。
ここが分かれ目です。配信量が少ないのに冒頭のカットを作り直しても、掛け算の相手が小さいままなので効きません。逆に配信量はあるのに再生されていないなら、いくら本数を増やしても同じ結果が並ぶだけです。どちらが小さいのかを先に見る。順番はこれだけです。
「バズらない」と「伸びない」は別の問題です
たまに突き抜ける1本が出ないことと、平均が上がらないことは、原因も対処も違います。前者は偶然の要素が大きく、こちらから狙ってどうにかできる範囲が狭いです。後者は構造の問題なので、切り分ければ手が入ります。
外注を検討している段階なら、比べるべきは後者に対して何をすると言っているかです。突き抜ける1本を約束する提案は、書き方として無理があります。
フォロワーが増えていないこととは、切り離して考えます
再生数とフォロワー数は連動しますが、動く順番が違います。フォロワー側の詰まりについては別の記事で層に分けて書いたので、そちらが知りたい場合は後半の内部リンクから読んでください。この記事はリールの再生数だけに絞ります。
層1:そもそも、フォロワーの外へ配られていますか
まず「フォロワー以外」の比率を見ます
リールのインサイトには、視聴した人のうちフォロワーとフォロワー以外がどれくらいかを示す内訳があります。ここが最初のチェックポイントです。
フォロワー以外の比率が低い状態が続いているなら、その投稿はほぼフォロワーの中だけで完結しています。この状態でテロップの色や音楽を変えても、変わるのは同じ人たちの反応だけです。届く範囲そのものが広がりません。
アカウント全体で配信が伸びていない場合もあります
1本ごとではなく、直近の複数本をまとめて見てください。全部が同じくらい低いなら、投稿単位ではなくアカウント単位の問題として扱ったほうが早いです。特定の1本だけが低いなら、その本の中身の話になります。
ここを分けずに「最新の1本が伸びなかった」から結論を出すと、毎回ちがう改善策を試すことになります。私も自分のアカウントでこれをやりました。1本ごとに反応して、そのつど別のことを試して、結局どれが効いたのか分からなくなりました。
層1で手元に並べる数字
- 直近5本から10本の、フォロワー以外の視聴の比率をメモに並べる
- その比率が、本ごとにばらついているのか、全部低いのか
- 投稿の時間帯や曜日が揃っているか(揃っていないと比較になりません)
この層について、外注先へ投げる質問
「再生数を伸ばします」という言い方の中身を分解してもらってください。配信量を増やす話をしているのか、反応率を上げる話をしているのか。提案書に書かれた施策が、どちらに効くつもりのものなのかを聞くだけで、その会社が層で考えているかどうかが分かります。
層2:配られたのに、最初の一瞬で離脱していませんか
見るのは平均視聴時間ではなく、落ち方の形です
平均視聴時間は、いろいろな見られ方が平均されてしまうので、原因の特定には向きません。見たいのはどこで人が減っているかです。
最初のほうで一気に落ちているなら、冒頭で「自分に関係ない」と判断されています。中盤でゆるやかに落ちているなら、続きを見る理由が途中で切れています。この2つは、直す場所がまったく違います。
冒頭で落ちる原因は、たいてい内容ではなく「情報の順番」です
凝った映像から始まる構成は、作っている側は満足しますが、見る側は何の動画か分からないまま指を動かします。冒頭に必要なのは、うまさではなくこれが何の話かが即座に分かることです。
ここは断定を避けて書きますが、私が担当したアカウントでコンセプトから作り直したとき、いちばん大きく変えたのはこの部分でした。それが効いたのかどうか、伸びている最中は分かりませんでした。効いていたのかもしれない、という程度にしか今も言えません。
音が前提の作りになっていないか
音声で説明していて、画面には情報が出ていない作りは、無音で見ている人には何も伝わりません。テロップを入れるかどうかは好みの問題ではなく、音を出さない人にも届く作りにするかどうかの選択です。
層2で手元に用意するもの
- 視聴維持のグラフを開き、急に落ちている位置が最初なのか中盤なのかを見る
- 冒頭の2秒を音を消して再生し、何の話か分かるか確かめる
- 同じ確認を、自分ではない人にやってもらう(作った本人は分かってしまいます)
層3:最後まで見られているのに、次に繋がっていませんか
保存とシェアは、再生数を押し上げる側の数字です
いいねより、保存されているかシェアされているかのほうを先に見ます。あとで見返したい/誰かに送りたいと思われたかどうかが、その投稿が単発で終わるかどうかの分かれ目になります。
ここが弱い場合、投稿は「見て終わり」の消費物になっています。再生されているのに次の投稿の配信が伸びないなら、この層を疑ってください。
最後まで見られること自体が目的化していないか
尺を短くすれば最後までは見られます。ただし短いだけの動画は、保存する理由も送る理由もありません。維持率だけを追うと、この落とし穴に入ります。維持率と保存を必ず並べて見てください。
プロフィールまで来ているかを、同じ画面で見ます
再生数が伸びていても、プロフィールへのアクセスが増えていないなら、投稿と店舗や事業が繋がっていません。再生数を目的にしている場合はそれでも良いのですが、集客が目的なら、この数字が動かないかぎり再生数は意味を持ちません。
上から順に判定する手順(そのまま使えます)
そのまま上から実行できる形にしました。途中で条件に当てはまったら、そこで止めて、その層だけを直してください。下の層まで一気に読み進めないことが、この手順のいちばん大事なところです。
- 直近5本から10本を、同じ表に並べる。本ごとに、再生数・フォロワー以外の比率・視聴維持・保存数を横に並べます。1本だけを見て判断しないための準備です。
- 比較できない本を、先に除外する。投稿の時間帯が大きくずれている本、尺が極端に違う本、キャンペーン等の特殊な本は、この判定から外します。条件が揃っていない数字を混ぜると、原因が見えなくなります。
- 全部の本で、フォロワー以外の比率が低いか。低ければ層1で止まっています。ここで判定を終えて、配信の範囲を広げる話に集中します。冒頭のカットや音楽の検討には進みません。
- 比率は本ごとにばらついているか。ばらついているなら配信の仕組み自体は動いています。ここから本単位の話に入れます。
- 視聴維持のグラフで、落ちている位置を分類する。最初のほうで急落しているなら層2の冒頭。中盤でだらだら落ちているなら層2の構成。この2つを混ぜないでください。
- 冒頭の2秒を、音を消して、自分以外の人に見せる。何の話か答えられなければ、そこが原因です。答えられたなら次へ進みます。
- 最後まで見られているのに、保存がほぼ付いていないか。そうなら層3です。もう一度見たい理由か、誰かに送りたい理由が、その動画の中に入っていません。
- プロフィールへのアクセスが動いているかを、最後に見る。動いていなければ、再生数を上げること自体は達成できても、事業の数字には繋がりません。目的を再生数に置くのか集客に置くのか、ここで決め直します。
- 判定した層を、紙に1行で書き残す。「いまは層1」と書いておくと、次に落ち込んだときに同じ切り分けをやり直さずに済みます。手応えが無い期間は必ずあるので、判定を残しておくことが効きます。
この手順で、今日できるのは1から3までです。インサイトを開いて数字を並べるだけなので、撮影も編集も要りません。それだけで、いま直すべき層が1つに絞れます。
リールを外に出すとき、見積もりの大きさを決めているもの
ここからは、判定した層を人に任せる場合の話です。届いた見積もりが高いか安いかを判断する前に、その見積もりが何の量を数えているのかを分解してください。リールの場合、動いているのはだいたい次の7つです。額そのものではなく、どの条件が増えると上がって、どの条件を削ると下がるのかという向きで持っておくと、比較のときに迷いません。
1. ひと月に作る本数
いちばん素直に効きます。編集の手が本数ぶん増えるからです。ただしこの記事の観点で言うと、本数は層1で止まっているときにだけ、検証の回数として意味を持つものです。層2や層3で止まっているアカウントで本数を増やすと、同じ結果の本が並ぶだけで、支払いだけが増えます。本数を増やす前に、いまどの層かを判定してください。
2. 撮影に人が来るかどうか、来るなら何回で何時間か
素材をこちらが受け取って編集するだけの形と、撮る人が現地へ行く形では、そもそも別の商品です。人が動く時間がまるごと乗るからです。同じ「リール運用」という言葉でも、この一点で見積もりの桁が変わります。
ここで見落とされがちなのが、設営と撤収が撮影時間に入っているかどうかです。機材を出して片づける時間は必ず発生します。「2時間の撮影」と書いてあるとき、その2時間が回している時間なのか、滞在している時間なのかで、実際に撮れる量がかなり違います。
3. 拠点の数と、移動が発生するか
店舗が複数あるなら、拠点の数だけ撮影の機会が要ります。1か所で全部撮ってしまえるのか、それぞれの現場へ行くのかで作業量が変わります。遠方への出張が入るなら、そのぶんも別で扱われるのが普通です。拠点をひとつに絞れるなら、それだけで見積もりは下がる方向に動きます。
4. 企画と台本を、どちらが作るか
「撮影と編集」とだけ書かれている見積もりは、何を撮るかは依頼側が決める前提のことがあります。企画の型を作り、1本ごとの構成を書くのは、それ自体がまとまった作業です。ここを含めるかどうかで、見積もりの中身も、依頼側の負担も変わります。
この記事の切り分けで言えば、層2の冒頭を直せるのは企画と台本の側です。台本が依頼側の仕事になっている契約で「冒頭を直してください」と頼んでも、直す人がいません。
5. 分析とレポートが含まれるか
数字を出すだけなら手間は小さいのですが、層で切り分けて次に何をするかまで書くとなると、毎月の作業として乗ります。ここを含めない見積もりは、そのぶん軽くなります。ただし含めなかった場合、この記事の判定は依頼側が自分でやることになります。安く見える見積もりを見たときは、この作業が誰の側に移ったのかを確かめてください。
6. 投稿までやるのか、納品までなのか
完成したデータを受け取って自分で投稿する形と、投稿まで任せる形があります。投稿まで含むなら、投稿する時間帯の管理や、コメントが来たときの扱いも話に入ってきます。アカウントの権限をどこまで預けるかという話とセットになるので、金額の前に確認しておく項目です。
7. 媒体をいくつ持つか
同じ素材からリールとYouTubeのショートを両方出すのか、Instagramだけなのか。地図の情報整備(MEO)を一緒に見るのか。媒体が増えれば、書き出しの仕様も、見る数字も増えます。ただし、まだどの層で止まっているか分かっていない段階で媒体を増やすのは、判定を難しくするだけです。
見積もりを取るときの手順
先に条件を固定してから、同じ紙を配る
複数社に声をかけるとき、各社が違う前提で書いてきた見積もりは並べても比べられません。本数・撮影の回数と時間・拠点の数・企画台本の有無・レポートの有無・投稿代行の有無を先にこちらで決めて、同じ条件で出してもらってください。この6つを揃えるだけで、比較が成立します。
まだ条件が決まっていないなら、決まっていないと伝えたうえで2つの案(削った形と含めた形)で出してもらうのが早いです。差額の中身が、そのまま「その項目にいくら乗っているか」の答えになります。
内訳を分けてもらう
「運用一式」でまとまっている見積もりは、あとから条件を変えるときに動かせません。制作/撮影/企画/レポート/投稿代行を、別の行に分けて出してもらってください。分けられないと言われた場合、それはそれで情報です。どこにどれだけ手がかかっているかを、その会社が把握していない可能性があります。
含まれないものを先に聞く
見積書には、やることしか書かれません。書かれていない仕事は、消えるのではなく依頼側に残ります。次のあたりは、聞かないと出てこないことが多い項目です。
- 修正は何回まで含まれるか。それを超えたときの扱い
- 撮影が悪天候などで流れたとき、撮り直しは含まれるか
- 編集前の素材データを受け取れるか
- 契約が終わったあと、投稿とアカウントはどちら側に残るか
- 撮影で使う小道具や食材の費用は、どちら持ちか
増えたときにどう請求されるかを、先に決めておく
途中で本数を増やしたい、撮影を1回足したい、という話は必ず出ます。そのときの単位を、契約の前に文字で持っておいてください。「都度ご相談」とだけ書かれていると、増やしたい場面で毎回交渉が発生します。
外注を比べている段階なら、どこを見るか
「本数を増やします」が答えになる層は限られています
本数を増やすと配信の機会は増えるので、層1には効く可能性があります。ただし層2や層3で止まっているアカウントでは、同じ結果の本が増えるだけです。提案の中で、どの層に対して本数の話をしているのかを確かめてください。
レポートに、どの数字が載るのかを先に聞く
再生数といいねだけが並ぶレポートでは、この記事の切り分けはできません。フォロワー以外の比率、視聴維持、保存、プロフィールへのアクセス。この4つが載るかどうかを、契約前に聞いておくと確実です。見本を見せてもらうのがいちばん早いです。
数字が動かない時期に、何を言う会社かを見る
リールは、出してすぐ結果が出るとは限りません。私自身、担当したアカウントで手応えが無い期間がしばらく続いたあとに急に伸びた経験があるので、反応が無い期間をすぐ失敗とは考えないようにしています。ただしこれは「待てば伸びる」という意味ではありません。待っている間に何を見ているのかを説明できるかどうかが、判断の分かれ目です。
当社に声をかけていただく場合
当社のInstagramの運用も、上に挙げた条件の組み合わせで形が変わります。本数を増やすほど検証できる回数は増えますが、層1で止まっているのか層2なのかによって、増やす意味そのものが変わります。だから、本数から先に決める話はしていません。いまどの層で止まっていそうかを伺って、そのうえで撮影の回数と範囲を組みます。条件を伺ってお見積りしますので、具体的に並べたい段階でしたら料金・お見積りのページからお申し付けください。
この記事が役に立つ場面と、空振りする場面
役に立つのは、数字が手元にある方です
すでに何本かリールを出していて、インサイトを開ける方です。数字が手元にあるからこそ、切り分けができます。
空振りするのは、判定する材料がない場合です
まだ1本も投稿していない段階の方には、この手順は使えません。判定する材料がないからです。その場合は、まず数本出して数字を溜めるほうが先です。
また、突き抜ける1本を作る方法を探している方にも向きません。この記事は平均を底上げする話であって、偶然を狙う話ではありません。
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まとめ
最初の質問に戻ります。自分のリールがどの層で止まっているかは、直近の数本を同じ表に並べて、上から順に条件を当てはめれば判定できます。
- フォロワー以外に配られていないなら、層1。冒頭の作り込みには進まない
- 配られているのに最初で落ちるなら、層2の冒頭。音を消して他人に見せて確かめる
- 最後まで見られているのに保存が無いなら、層3。見て終わりの投稿になっている
- 再生されてもプロフィールに来ていないなら、目的の置き方から決め直す
外注先を比べている段階なら、聞くことは1つに絞れます。「うちはいまどの層で止まっていると見ていますか」。この問いに、数字を挙げて答えられるかどうかです。答えが「とにかく本数を増やしましょう」だけなら、まだ切り分けが済んでいません。
そして見積もりのほうは、本数・撮影の回数と時間・拠点・企画台本・レポート・投稿代行を先に固定してから配る。この2つを分けて持っておくと、比べる作業が一気に楽になります。
伸びない時期は、やっている側にも見えにくいものです。私も判定を間違えかけました。だからこそ、感覚ではなく層で見る道具を持っておくと、次の一手を迷わずに決められます。
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