不動産会社がインスタの運用を外注するとき、提案書を並べても違いが見えにくいことがあります。投稿の本数や動画の有無は書いてあっても、不動産ならではの作業がどこに入っているのかが書かれていないからです。
この記事が答える質問は1つです。「不動産会社のインスタ集客を外注するとき、どこを見れば提案を比べられるのか」。
先にお答えすると、差が出るのは投稿の出来ばえではありません。物件を撮りに行く段取り、持ち主の承諾、広告の表示ルールの確認、成約した物件の投稿の片付け。この4つを誰が持つかです。ここが決まっていない提案は、始めてから社内に作業が戻ってきます。
不動産のインスタで外注先の差が出るのは、投稿を作る前と後です
載せた物件は、いずれ事実でなくなります
飲食店のメニューや美容室の施術は、投稿したあとも同じものを提供できます。物件は違います。成約した時点で、その投稿に載っている部屋はもう案内できません。
つまり不動産のインスタは、出したあとに片付ける作業がずっと続きます。ここを誰が持つかを決めないまま始めると、成約済みの物件が載ったアカウントが残ります。
写っている部屋は、御社の持ち物とは限りません
仲介の物件なら、持ち主は売主や貸主です。入居中の部屋を撮るなら、そこには入居者の暮らしがあります。撮ってよいか、載せてよいかを決めるのは御社だけではありません。
この確認を外注先が段取りに組み込んでいるか、御社の営業担当に任せる前提なのか。提案書を読むときは、まずそこを探します。
不動産会社のアカウントを担当した経験は、私にはありません
正直にお伝えしておきます。私が業務委託で受けているのは、インスタとMEOの運用代行です。企画と台本の作成、編集の指示、投稿作業、月次の分析をしています。ただ、不動産会社の運用を担当した経験はありません。
ですからこの記事では、「こうすれば反響が増える」とは書きません。書くのは、運用を受ける側から見て見積もりと作業の分担がどこで割れるかです。表示ルールについても、私は専門家ではありません。最終的な確認は、宅地建物取引業の実務を持つ御社側で行ってください。
この比べ方で判断が進む会社と、先に別のことを決めたい会社
物件の紹介と売却の相談、どちらを取りたいか決まっている会社
同じ不動産会社のインスタでも、狙う相手は2種類あります。部屋や家を探している人と、持っている物件を売りたい、貸したいと考えている人です。
前者なら物件の投稿が中心になり、この記事の4つの条件がそのまま効きます。後者なら、物件より会社の人柄や相談の流れを見せる投稿が中心になります。どちらを取りたいかが決まっている会社は、このまま読み進めてください。
ポータルサイトとの役割分担が、まだ決まっていない会社
物件を探す人の多くは、まずポータルサイトで条件を絞ります。インスタでも同じ物件を並べるだけなら、同じ情報が2か所にある状態になります。
インスタで何を見せるか、たとえば周辺の暮らし、スタッフの顔、内見の雰囲気などが決まっていない段階なら、外注先を比べる前にそちらを決めたほうが早いです。決まっていないまま見積もりを取ると、各社が別々の仮定を置くので比べられません。
分かれ目1:物件ごとの撮影を、誰がいつ現地で行うか
撮れるのは、空室になってから次が決まるまでの間です
賃貸なら退去から次の入居まで、売買なら引き渡しまで。撮影できる期間は物件ごとに区切られていて、しかも長さが読めません。月に何回撮影に来る、と回数だけ決めた提案だと、撮りたい物件の期間と日程がずれることがあります。
確かめたいのは、撮影日をどう決めるかです。新しく空いた物件の連絡を受けてから何日以内に来られるのか。鍵の手配は誰がするのか。ここを聞いてください。
営業担当のスマホで撮るか、外注先が現地に入るか
営業担当が内見のついでにスマホで撮り、外注先は編集と投稿だけを持つ形もあります。この場合、撮影の手間は社内に残りますが、撮れる期間を逃しにくくなります。
外注先が現地に入る形なら、画の質はそろえやすくなります。その代わり、撮影の回数と移動が作業に乗ります。どちらが良いかではなく、社内の誰が現地に行けるかで決まります。
同じエリアの物件を、1日にまとめて回れるか
外注先が現地に入る場合、1日に何件回れるかで作業の重さが変わります。管理している物件が近い範囲に集まっている会社と、広い範囲に点在している会社とでは、同じ件数でも移動の時間が違います。
見積もりを取るときは、撮影候補の物件がどのあたりに分布しているかを先に伝えておくと、各社の答えがそろいます。
分かれ目2:売主・貸主・入居者の承諾を、どこで取るか
載せてよいかと、撮ってよいかは別に確かめます
売主や貸主が物件の広告に同意していても、インスタに動画で載せることまで同意しているとは限りません。入居中の部屋なら、入居者の了解も要ります。
外注先に聞きたいのは、承諾が取れているかどうかを、撮影の前にどう確かめる流れになっているかです。「承諾は御社でお願いします」と書かれているなら、それはそれで構いません。ただ、その確認にかかる時間は社内の作業として数えておいてください。
窓の外の景色や表札で、場所が分かってしまいます
写真や動画には、狙っていないものも写ります。窓から見える建物、共用部の掲示物、郵便受けの名前。物件の所在地をどこまで出すかは会社ごとの方針がありますが、入居者がいる建物では特に注意が要ります。
編集の段階で映り込みを確かめる工程が、外注先の作業に入っているか。ここも提案書で見ておきたい場所です。
分かれ目3:広告の表示ルールを、どちらが確かめるか
インスタの投稿も、物件の広告として読まれます
不動産の広告には、業界の規約で決まった書き方があります。たとえば駅からの徒歩の所要時間は、道路距離80メートルを1分として計算すると「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」に定められています。取引態様の表示や、成約した物件を載せ続けない決まりもあります。
これは私が2026年9月時点で理解している範囲の話です。細かな基準は改定されることがあるので、最新の内容は業界団体の公表資料で確かめてください。
インスタのキャプションや動画のテロップにも、同じ注意が及ぶと考えておくのが安全です。「駅近」「日当たり抜群」のような言葉を、根拠なく入れていないかどうかも含めてです。
確認の担当が空欄の提案書は、そこで止めて聞きます
外注先は、テロップやキャプションを書く側です。表示ルールを知らないまま書けば、確認で差し戻しが増えます。知っていても、最後に責任を持つのは広告を出す御社です。
ですから、下書きの段階で外注先が確かめるのか、御社の宅建士が最後に見るのかを、両方とも決めておきます。確認する人が誰なのか、何日で戻すのかまで決まっていると、投稿の予定がずれにくくなります。
分かれ目4:成約した物件の投稿を、誰がいつ片付けるか
残った投稿は、問い合わせが来ても案内できません
成約した物件の投稿を見てDMが来たとき、案内できる物件はもうありません。似た物件を紹介できる場合もありますが、見た人からすれば、載っていた部屋が無いという体験になります。
投稿を消すのか、成約済みと分かる形に直すのか、アーカイブに移すのか。どれを選ぶかより、成約の情報が外注先に届く道があるかが先です。社内の物件管理と外注先の投稿一覧が、どこかでつながっている必要があります。
片付けの作業が、月の中に入っているか
提案書に「月◯本の投稿」と書かれていても、過去の投稿を直す作業は書かれていないことが多いです。成約の多い月ほど、この作業は増えます。
片付けが外注先の作業に入っているのか、社内で行う前提なのか。入っているなら、成約の連絡から何日以内に対応するのか。ここを1行で答えてもらってください。
見積もりの金額を動かしている条件
ここでは金額そのものは書きません。代わりに、何が増えると重くなり、何が減ると軽くなるのかを並べます。
撮りに行く物件の数と、店舗の数
外注先が現地に入る場合、月に撮る物件の数が増えるほど作業は重くなります。点在している物件を回るなら、移動の時間も乗ります。店舗が複数あり、それぞれにアカウントや担当者がいる場合も、打ち合わせと確認の窓口が増えるので重くなります。
ルームツアーの動画を、何本どの長さで作るか
部屋の中を歩いて見せる動画は、写真よりも撮影と編集に時間がかかります。本数と1本の長さ、テロップに間取りや設備の説明を入れるかで作業量が変わります。写真中心の投稿が多いほど軽くなり、動画中心になるほど重くなります。
表示の確認と、成約後の片付けを外注先の作業に含めるか
分かれ目3と4の作業を外注先が持てば、そのぶん見積もりは重くなります。社内で持てば軽くなりますが、社内の時間が消えるわけではありません。見積もりの差が大きいときは、この2つが入っているかどうかを最初に確かめてください。企画と台本、月次の分析を含むかどうかも、同じように金額を動かします。
見積もりは、条件をそろえて取ります
比べられる見積もりにするための手順です。
- 月に撮りたい物件の数、エリアの広さ、店舗の数を1枚にまとめ、全社に同じものを渡します。
- 撮影は社内か外注か、表示の確認と成約後の片付けはどちらが持つか、希望を書き添えます。決めきれない項目は「未定」と書きます。
- 返ってきた見積もりは、撮影・編集・確認・片付け・分析の行に分けてもらいます。「一式」の行があれば、中身を聞きます。
- 見積もりに含まれていない作業を先に聞き、社内に残る作業として書き出します。
具体的な金額を知りたい方は、「料金・お見積り」ページからご相談ください。条件を伺ってお見積りします。
なお、インスタ経由の問い合わせがどれだけあったかを数えるには、ポータルや電話と混ざらないよう、受けた側で出所を残しておく必要があります。考え方はインスタで予約が増えない|予約台帳の側から原因を切り分けるで書いています。
持ち帰れるパーツ:不動産会社の1か月の運用スケジュール例
物件の紹介を中心にする場合の例です。外注先に渡す前の叩き台として使ってください。担当欄は、見積もりの分担に合わせて書き換えます。
第1週:撮る物件を選び、承諾と鍵をそろえる
- 新しく空いた部屋、売り出した物件の中から、今月撮る候補を選ぶ
- 売主・貸主の掲載承諾と、SNSへの掲載まで含むかを確かめる
- 入居中の物件があれば、入居者の了解を取る
- 鍵の受け渡しと、撮影日の候補を外注先へ送る
第2週:近いエリアの物件をまとめて撮る
- 同じエリアの物件を同じ日に回る
- 外観を撮るときは、窓の外の景色や表札、掲示物の映り込みをその場で確かめる
- 間取りと設備の情報を、撮影と同じ日に控えておく
第3週:編集し、表示の確認を通してから出す
- テロップとキャプションの下書きを作る
- 徒歩の所要時間、取引態様、根拠のない形容の言葉を確かめる
- 宅建士が最後に目を通し、戻ってきたものから投稿する
第4週:成約した物件を片付け、出所を数える
- 今月成約した物件の投稿を、決めた方法で直すか外す
- インスタ経由の問い合わせが何件あったかを、受付の記録から数える
- 反応が多かった投稿の物件や見せ方を控え、翌月の候補選びに回す
毎週月曜に1回だけ行うこと
- 先週成約した物件の一覧を、外注先と共有する
1か月で成果を判断しないでください。私自身、引き継いだ案件をコンセプトから作り直したとき、伸びるまで手応えが一切ない時期がしばらく続きました。数か月は、問い合わせの数より「決めた作業が毎月そろって回っているか」を見るほうが確かです。
この記事と近い話は 工務店のSNS集客|工程表と施主の同意から外注先を比べる/インスタ運用代行の料金|見積もりの差がどこから来るのかを分解する にも書いています。
まとめ
不動産会社のインスタ集客を外注するとき、提案を比べる場所は投稿の出来ばえではありません。物件ごとの撮影を誰がいつ行うか、持ち主と入居者の承諾をどこで取るか、表示ルールを誰が確かめるか、成約した物件の投稿を誰が片付けるか。この4つです。
今日できることは1つあります。いまの物件の中で成約したものを思い浮かべて、それがインスタに載っていたら誰がどう気づくかを考えてみてください。答えが出ないなら、そこが外注先に最初に聞く場所です。
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